このシリーズでは、博士課程を経て研究者として働き、現在は民間企業でXR・CVエンジニアとして働く筆者(Maiei)が、自身のキャリアの選択と気づきを振り返っていきます。
第3回は、研究者から民間企業のエンジニアになって、気付いた違いや共通点を自身の経験をもとにお話します。
シリーズ全体の構成は以下のとおりです:
- 第1回:研究者になるまで
- 第2回:アカデミアから民間企業への転職
- 第3回:アカデミアと民間企業の比較(この記事)
- 第4回:これからのキャリアをどう描くか
前提:あくまで僕個人の話です
最初にお断りしておきたいのですが、「アカデミア」といっても分野や所属によって文化は大きく異なります。
また、僕が今所属しているのは大企業ではなくスタートアップ企業です。
自分自身、それぞれで働いていた期間が長いというわけではないので、見えていなかったことをたくさんあるかと思います。
なので、以下でお話しするのはあくまで「僕自身が経験した範囲での感想」です。
一般化できることばかりではありませんが、少しでも誰かの参考になれば嬉しいです。
共通点①:勉強はずっと続く
これはどちらにも共通することですが、「勉強を続けること」は必須です。
アカデミアでは当然、自分の研究分野に関連する最新の論文や技術を常にキャッチアップする必要がありました。
一方で民間企業に入ってからも、やはり新しい知識や技術を身につけなければ業務が回りません。
とくに僕のように「画像処理」や「コンピュータビジョン」のような全くの未経験分野に飛び込んだ場合、自分で時間を作ってキャッチアップするしかありません。
大企業であれば研修制度が整っているかもしれませんが、スタートアップや中途採用では基本的にOJT中心。
「自分で学び、自分で試す」という姿勢が共通して求められます。
共通点②:課題解決のプロセス
アカデミアでは「未知の問いにどうやって答えるか」という形で、問題解決に取り組んでいました。
民間企業でも、目的やスピード感は異なれど、「問題や課題を見つけて、どう解決するか」は常に問われています。
アプローチは異なりますが、「仮説を立てて検証する」「複数の選択肢を比較検討する」といった基本的な思考プロセスは共通しています。
この点では、アカデミアで鍛えたスキルがそのまま活きているなと感じます。
共通点③:周囲との関係性の大切さ
アカデミア時代も、民間に来てからも痛感しているのは、「周囲の人との関係性」がものすごく大切だということです。
指導教員、共同研究者、学生。
上司、同僚、エンジニア仲間、営業チーム。
関わる人は変わっても、「どう信頼関係を築けるか」「どれだけ安心して相談できるか」は、働きやすさや成果に直結します。
どちらも人間関係は仕事の大事な土台なんですよね。
相違点①:プライベートの時間の明確さ
一番大きな違いだと思うのが、「プライベートの時間の扱い方」です。
アカデミアでは、仕事とプライベートの境界が曖昧でした。
自宅で解析をしたり、深夜や休日にアイデアをまとめたり、メール等の対応をしたり…というのが日常。
もちろん自由度が高いというメリットもありますが、「やろうと思えば無限に仕事できてしまう」という状態でもありました。そしてそれを容認している世界だったと思います。
一方、今の会社では、業務時間外に仕事をしない文化や制度が明確にあります。
PCが自動的にロックされたり、コミュニケーションツールが使えなくなったり、仕組みとしてオン・オフを切り分けられているのは驚きでした。
相違点②:「正しい」よりも「伝わる」こと
もう一つの違いは、「正しさ」よりも「伝え方」が重視される場面が増えたことです。
アカデミアでは、理論的に正しい主張を通すことが大切でした。
データや論理があれば、多少ストレートな物言いをしても問題にならないこともありました。
でも企業では、たとえ正しくても、相手への伝え方やタイミングを間違えると良い結果につながらないことがあります。一つの結果からも伝えられることは複数あり、どのように伝えるかは今も悩んでいます。
正論を押し通すより、周囲の意見を尊重して柔らかく伝えることが重要だったりします。
これはまだまだ僕自身も学びの途中ですが、「伝える力」や「空気を読む力」は思った以上に求められます。
おわりに:どちらも魅力的。でも、自分の価値観次第
アカデミアにも民間企業にも、それぞれの良さと難しさがあります。
どちらが正解ということではなく、「自分が何を重視するか」が一番大切なんだと、転職して改めて感じました。
次回は、「今後のキャリアをどう考えているか」というテーマで、今の目標やこれからの展望についてお話ししようと思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
キャリア振り返りシリーズ記事
◀️ 前回:アカデミアから民間企業への転職
▶️ 次回:これからのキャリアをどう描くか
コメント