このシリーズでは、博士課程を経て研究者として働き、現在は民間企業でXR・CVエンジニアとして働く筆者(Maiei)が、自身のキャリアの選択と気づきを振り返っていきます。
第2回は、憧れの研究者になって初めて気づいたこと、そして、転職に至るまでの気持ちをお話します。
シリーズ全体の構成は以下のとおりです:
- 第1回:研究者になるまで
- 第2回:アカデミアから民間企業への転職(この記事)
- 第3回:アカデミアと民間企業の比較
- 第4回:これからのキャリアをどう描くか
研究者としての日々:研究と教育のはざまで
博士号を取得し、念願の研究者としてのキャリアがスタートしました。
学生の頃とは違う実験グループに参加し、知らないことだらけではありましたが、他の研究者の方々にも協力してもらいながら、新しい環境に慣れていきました。自身の研究テーマ自体はそれなりに順調に進めることができていたんじゃないかなと思います。
戸惑いが大きかったのは、学生への指導でした。
これまでの「教わる側」から「教える側」になるという立場の変化は大きかったです。
「教える立場」のはずが、実際には学生の方が詳しい場面も多く、逆に教わることも少なくありませんでした。
これまでの自身の経験と新しく得た知識を総動員して、学生の研究がいい方向に進むように努力をしました。
自分のことをするだけと比べると大変ではありましたが、けっして苦ではなく、むしろやりがいを感じていました。
研究も教育も、それなりに前に進めていた実感がありましたし、当時の生活には満足していました。
将来のことを考えるようになったきっかけ
ある時、同じく同期で博士号を取得し、研究者をやっていた友達と、ふとした飲み会の席で、「実際、研究者になってどう?」と話したことがきっかけでした。
研究自体は楽しい、教育もやりがいを感じている、と今の生活には満足していると共感していましたが、今は不安定な任期制で将来的にも任期なしの職に就けるのか、将来の不安はお互いに感じていました。
結論はもちろん出ませんでしたが、今後のキャリアを考え始めるきっかけでした。
夢だった研究者という仕事、でも…
その時から、「夢の研究者にはなれたけど、このままでいいのか?」と考えることが増えました。
研究者としてキャリアを積んだ先は、自身の研究室や実験を主導する「教授」だと思いました。
では、そもそも「教授になりたいのか?」と自問したとき、はっきりと「Yes」とは思えませんでした。
教授として働くには、研究以外にも多くの雑務・管理業務が求められる現実を目の当たりにし、「研究だけに没頭するには、時間が足りていない」と感じるようになりました。
気づいたのは、ワークライフバランスの大切さ
研究そのものに対しては何の不満もありませんでした。
むしろ、1日8時間研究に没頭できるなら幸せです。
でも、「仕事の8時間」に加えて「プライベートの8時間」も研究に捧げることには違和感を感じました。
そうした生活を「好きでやっている」方々ばかりの中で、自分だけが「ちょっと違うかも」と思ってしまったのです。
このとき、自分はプライベートの時間を捧げるほどは研究がしたいわけではなかったんだ、と気づきました。
転職を決意、そして未経験の分野へ
決してブラックな環境ではなかったからこそ、冷静に自分を見つめることができたのかもしれません。
「この先の不安定さ」「自分の求める働き方」――そうしたことを総合的に考えて、民間企業への転職を決意しました。
とはいえ、すぐに大手に行くよりも、もっと柔軟にチャレンジできる環境の方が合っている気がして、
スタートアップ企業を中心に転職活動を始めました。
そして、まったくの未経験でしたが、興味と好奇心を武器に、一歩を踏み出してみたのです。
まだまだ勉強しながら業務こなす日々ですが、新しい分野で楽しく頑張ることができています。
おわりに
今回は、研究者として働く中で見えてきた自分の価値観や、転職に至るまでの経緯をお話ししました。
次回は、「アカデミアと民間企業の違い」について、自分の体験をもとにお話ししていきたいと思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
キャリア振り返りシリーズ記事
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